脂質異常症(高脂血症)とは
脂質異常症(高脂血症)とは、血液中のLDLコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が多すぎたり、HDLコレステロールが少なくなる病気です。脂質異常症(高脂血症)をほうっておくと、血管の動脈硬化が少しずつ進んでいき、やがて心筋梗塞や脳卒中などの深刻な病気が引き起こされることになります。
脂質異常症(高脂血症)の種類
脂質異常症は、その原因によって「原発性高脂血症」と「二次性(続発性)高脂血症」の2つに分けられます。
また、異常値を示す脂質の種類によって「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセライド血症」にも分けられますが、一人の患者さんが複数のタイプをあわせ持っていることもあります。
原発性高脂血症
原因がはっきりと分かっていないタイプの脂質異常症で、多くは患者さんの生活習慣が影響して引き起こされると考えられています。
原発性高脂血症のひとつである「家族性高コレステロール血症」は、遺伝が強く関係しており、生活習慣とほとんど関係なく起こります。
二次性(続発性)高脂血症
他の病気や薬が原因となって起こるタイプの脂質異常症です。原因となっている病気を治療したり、可能ならば薬を変えたりやめたりすることで、脂質異常症を改善することができます。
原因となる病気には、甲状腺機能低下症や肝臓病、腎臓病、糖尿病などが、原因となる薬には、ステロイドホルモン剤や利尿薬、避妊薬などがあります。
高LDLコレステロール血症
動脈硬化に関係が深いLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高いタイプの脂質異常症です。
低HDLコレステロール血症
動脈硬化を防ぐ働きを持つHDLコレステロール(善玉コレステロール)が低いタイプの脂質異常症です。
高トリグリセライド血症
動脈硬化と関係が深く、急性すい炎とも関係があるトリグリセライド(中性脂肪)が高いタイプの脂質異常症です。
脂質異常症の診断
脂質異常症は、空腹の時に採血した血液の中のLDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)の値によって診断されます。この3つの脂質の値のいずれかが、下の表の基準値にあてはまると、脂質異常症と診断されます。
脂質異常症の診断基準値(空腹時採血)
LDLコレステロール値 | 140㎎/dL以上 | |
HDLコレステロール値 | 40㎎/dL未満 | |
トリグリセライド(中性脂肪)値 | 140㎎/dL以上 |
日本動脈硬化学会編
[動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007年版] p6より
脂質異常症から起こる合併症
脂質異常症は、動脈硬化を進め、心筋梗塞、脳梗塞の危険性を高める病気です。
また、日本人の認知症は、脳梗塞などの脳の血管の病気によって起こるものが6~7割を占めています。トリグリセライド(中性脂肪)が極端に高いと、急性すい炎を起こすこともあります。
心筋梗塞・脳梗塞など
動脈硬化は、血液の中で過剰になったLDLコレステロールが血管の壁の中に取り込まれ、それが蓄積することによって起こります。このため脂質異常症の患者さんでは、動脈硬化が起こりやすく、またその進行も早くなります。その結果、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる合併症が引き起こされる可能性があります。
閉塞性動脈硬化症
脂質異常症によって、足の血管の動脈硬化が進み、血流が悪くなってしびれや痛みが現れる病気です。歩行中に痛みが起こり、立ち止まると痛みが和らぐ「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」がみられることがあります。
急性すい炎
すい臓は、脂肪を分解する消化酵素を分泌していますが、血液中のトリグリセライド(中性脂肪)値が極端に高くなると、すい臓がこの消化酵素を大量に分泌し、それがすい臓自身を消化してしまうことがあります。この結果、激しい痛みを伴った急性すい炎が起こります。重症の場合には、命に危険が及ぶこともあります。
脂質異常症の症状
脂質異常症の患者さんが症状を感じることはほとんどありませんが、家族性高コレステロール血症の方では、目の縁やアキレス腱の中に特徴的なコレステロールの塊がみられることがあります。これを「黄色腫(おうしょくしゅ)」といいます。黒目の周りに白い輪(角膜輪:かくまくりん)ができることもあります。
治 療 法
脂質異常症は食事や運動などの生活習慣が深く関係しています。そのため、脂質異常症の治療の基本は食事療法と運動療法であり、この2つの治療法は長く続けていく必要があります。
食事療法と運動療法で脂質が改善しない時や、すでに動脈硬化による心筋梗塞、脳梗塞などの発作を起こしている場合などは薬物療法が行われます。
食事療法
コレステロールを多く含む食品を減らす、食物線維を多く含む野菜などを積極的にとる、トリグリセライド(中性脂肪)の高い人は糖質やアルコールを控える、肥満を解消・予防するために、摂取カロリーのコントロールなどを行います。
運動療法
適度な強さのウォーキングなどの有酸素運動を続けると、トリグリセライド(中性脂肪)を減らし、HDLコレステロールを増やす効果があることが分かっています。また、運動は肥満の予防や解消に役立ちます。
薬物療法
脂質異常症の薬には、主にLDLコレステロールを下げる薬や、トリグリセライド(中性脂肪)を下げる薬があり、患者さんそれぞれに適した薬を処方します。薬を2~3ヵ月服用しても、脂質管理目標値まで下がらない場合には、薬の変更や増量が検討され、数種類の薬を併用して服用することもあります。
日常生活で心がけること
食事療法、運動療法に取り組むほかに、動脈硬化を進めないために禁煙が勧められます。
禁 煙
タバコは、HDLコレステロール値を下げたり、LDLコレステロールを酸化させたり、血管を収縮させて血流を悪くして、動脈硬化を進めます。脂質異常症の方は、禁煙をおすすめします。
治療薬に影響を与える食品に気を付ける
脂質異常症の治療薬の中には、グレープフルーツジュースをとることによって、効果に影響が出るものがあります。また、血栓を予防するワルファリンという薬を飲んでいる場合に、納豆やクロレラ食品をとると、その効果に影響が出ることがあります。
患者様の声
高血圧とコレステロール、血糖値で受診しました。
これまで他の病院に通院していたのですが、予約制ではないこともありやむおえないところも有るのでしょうがとにかく長く待たされて、診療自体は数分程度という状況で正直あまり相談は出来ませんでした。